【書評】ビジネスモデルに絶対はない!|『ベンチャーファイナンス実践講義』水永政志著

あなたは起業家に欠かせないファイナンスの知識をどこまで知っているだろうか?

『現役経営者が教えるベンチャーファイナンス実践講義』水永政志著を読んだ。

この本は、現スターマイカ株式会社代表取締役の水永政志社長が書いたものだ。
現役のしかも上場している会社の社長が書く実践的なファイナンスの本として特におすすめしたい。

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まずこの水永政志社長がすごい!

スターマイカ水永政志

水永社長は、3度の起業経験がある。

プログラムの下請け会社として最初の起業

まず学生時代に、銀行のプログラム設計の広告を見つけてそれに応募してとても高いお金をいただいことからプログラムの下請けの事業を開始。学生だけで30人ほどの会社に成長させ、しかし学生だけの会社は脆く期日を守る人も少なく、結局自分たちで徹夜の日々。紆余曲折を経て、大企業に会社を売却する。

経営とビジネスモデルを猛勉強して、当時アメリカで注目を集めていた不動産投資信託(REIT)で起業

2回目の企業は学生時代から10年後、総合商社でのプライベートバンキング業務を経て、当時アメリカで不動産投資信託(REIT)で起業。
このビジネスは、金融機関や投資家の出資をもとに、数多くの不動産を保有し、家賃収入を得ながら、投資規模を拡大していくビジネスだった。

学生のときの失敗で、勉強を重ね資金も余裕がありスタートした2社目の経営。しかもこれから、必ず来るであろうと言われていたビジネスモデルでいとも簡単に500億円の巨額の資金調達の約束を取り付ける。
しかし突然のITバブルの崩壊で資金調達がなくなってしまった。

500億円を調達できるという予定で、高級な事務所、高級の役員、10人以上の社員を採用していた。
突然の経営環境の変化で、もがき続けたそうな。

結局、創業から半年後、運よく会社の買い手が現れ会社を売却することができた。
しかしなんと、その売却した会社が他の会社と合併し順調な業績に回復し、わずか1年後には上場することに。
その後も順調に業績を伸ばして、時価総額数千億円もの会社にまで成長したのだ。

3社目、不動産会社スターマイカを設立

5000億円の話がいきなり大赤字になり、もがき苦しんだ水永社長はまた新たな会社をつくろうと考えた。

インターネットバブルの崩壊という散々な目にあって、命からがら売却しても、その後はやることがありませんでした。

一度は、勤めていた外資系証券会社に戻ってみたものの、かつてはあんなにもエキサイティングだった職場が、なぜか色褪せてしまっているのです。

「もう一度、何かやりたい」という気持ちが、自然と湧いてきたのです。

なぜ、皆ベンチャーを起業するのでしょうか?
とても単純な答えとして、やはり起業は楽しいのです。何度失敗しても、「今度こそうまくできるんじゃないか?」とドキドキします。

一度起業して社長を経験すると、会社でお給料をいただいて、誰かの顔色を見ながら働くというサラリーマン生活に馴染むことがなかなかできなくなってしまうのです。

そんな水永社長がつくったのが現在のスターマイカだった。

今度は立派なオフィスや豪華な社長室は持たず、小さくスタート。1年目は一人で仕事を行いながら、ビジネスモデルを何度も考え、落とし穴がないかを入念に確認。
その後黒字が出てからやっと社員を雇い始め、成長を加速させるために、資金調達を行う。

4年後めでたく上場させることができたのだ。

不動産業界に新風をもたらしたスターマイカ

スターマイカは、賃借人が住んでいるマンションを売買する「オーナーチェンジ」に特化した不動産業だ。「オーナーチェンジ」とは、分譲マンションの所有者が、賃借人に住宅を貸しながら物件を売却し、オーナーが替わることだ。

スターマイカのビジネスモデルを一言でいうと
「賃貸に出されているマンションを買い集め、賃借人が退去した後にリフォームし、それを売却して利益を上げる」モデルだ。

水永社長は、金融業界での経験を生かし、金融の知識を不動産業界に持ち込んだ。
金融業界では「裁定取引」というものがある。たとえば、あるところでは豊富にある安い商品(東京の水)が、別のところではすごく貴重(砂漠の水)に高値で取引されている。安いところで買い、高いところで売れば利益を得られるのだ。

水永社長はそれを不動産業界にも当てはまると気づいた。

賃貸中のマンションの価格は、空室マンションに比べると平均25%安くなる。賃貸中のマンションは購入してもすぐに住めないうえ、投資目的とされ、金利の安い住宅ローンがつかない。そのため買い手が少なく、空室マンションに比べると価格が安くなっていた。

しかし、買い取った後、マンションを借りてる人が退去すれば、そのマンションは空のマンションと同じ価格になり確実な25%の利益が残る。マンションの入居者がいつ退去するかは購入時点では分からない。
借りている人が何年住み続けるかは、確率論でしか分からない。

しかし世帯ごとの予測はできなくても、保有するマンションの数が多くなれば、確率論が働き、毎年一定の退去者を予想できるのだ。

このモデルが成り立つためには、一定の不動産件数と売却するまで不動産を保有できる資金量が必要だった。

水永社長は、海外の投資ファンドにこのビジネスプランを説明し、資金調達によってこのモデルを可能にしたのである。

このモデルは、借りている人がすぐに退去すれば売却益が生まれ、なかなか退去なくても家賃収入があるというダブルインカムモデル、画期的なビジネスモデルとして有名になった。

水永政志社長が失敗から学んだ、起業における大切なこと

数々の失敗と成功を経て、水永社長が学んだ起業における大切なことを紹介する。

財務や経理を知らなければ、利益とキャッシュフローの違いもわからず、資金繰りに苦労する

それぞれのプロジェクトは利益が出ているはずなのに、月末になると「あれ、お金が足りないなあ。儲かっているのにおかしいなあ」という風になってくる。
なぜかというと、会計上の利益が出ていたとしても、それは現実のお金とは必ずしも一致しないからだ。なぜなら、ビジネスの世界では、売り上げたその場ですぐにお金がもらえないことが多いためだ。
だから月末になるとお金がないという事態が発生する。
そうならないように、ちゃんと財務と経理を勉強することだ。

資金調達をしなければ、会社は大きく成長しない

資金調達という手段を知らないと、お金を借りることや取引先から入金の時期を早めてもらうことくらいしか思いつかず、結局、手持ちの資金の範囲内でしかビジネスを展開することができない。

企業価値や法律を知らないと、経営権の維持や売却がうまくできない

学生の頃、知識が乏しかった水永社長は、自分たちの会社を単純に純資産の価値で売ってしまった。その企業から生まれる将来の価値を見込まずに、もっとも愚かと言える価格で売却してしまったそうだ。

ビジネスモデルに絶対はない

どんなに完璧だと思えるビジネスモデルでも、予想を超えた大波に襲われることもある。大事なのは、いかに備えられるかだ。絶えず、最悪の事態を想定することの重要性を水永社長は学んだのだ。

成功する方法よりも、失敗しない方法を選ぶ

成功するか否かは運次第だが、失敗するかどうかは過去の知識や経験があればある程度回避できる。本を読めば、人の失敗でさえ自分の経験として吸収することができるのだ。
失敗しない方法を選び続けることで、成功への可能性は確実に高まり、運を呼び寄せることができる。

この1ページがすごい!


社長が株式の過半を所有し、銀行からの借り入れの連帯保証をしている段階や、非上場で株式の譲渡制限をかけている段階では、個人事業に近い面が残っています。

これを上場して、会社の規模が発展して、後継者を育てて、創業者がイクジットすると、ようやく資本主義経済における本来の株式会社となるのです。

創業経営者はそこまでは頑張るべきです。

アントレプレナーとは、そのような会社をゼロからつくりあげることに無類の喜びを感じられる人なのです。
「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」という言葉もあります。

創業者の社会的な存在意義は、単にお金を遺すのではなく、経済的な価値を生み続ける企業をつくって、いい人材を育て、これらを社会にお渡しすることです。
—『現役経営者が教えるベンチャーファイナンス実践講義』 創業経営者の真価はイクジット後に問われるより

ぼくもこんな素晴らしいビジネスモデルを構築できる経営者になりたい!

スターマイカのビジネスモデルや水永社長の生き方をみて、
「ぼくもこんなビジネスモデルをつくれる経営者になりたい!」と思う。

そのためには、まだまだ経験と挑戦が足りない。
もっと色んなビジネスに触れて、その仕組みを研究し、自分の経験や強みとつなぎ合わせていく必要がある。

経営と言うものは本当に奥が深い。
勉強すればするほど、自分は浅いと痛感する。

でもいつかその深みへ到達できるよう頑張りたい。

 



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